NEW STANDARD株式会社は、株式会社電通デジタルと業務提携し、新規ブランドの立ち上げや既存ブランドの再創造をワンストップで支援するサービス「ブランド デジタルトランスフォーメーション(以下、BDX)」を提供し始めました。
今回はNEW STANDARD社代表の久志、アートディレクターの関根、アカウントエグゼクティブ兼プランナーの松本に、メディア事業にとどまらず業務領域を広げてきたNEW STANDARD社のケイパビリティがいかにBDXの提供に結びついたのか、なぜいまBDXを活用しブランドアイデンティティを策定することが重要なのか、について語ってもらいました。
NEW STANDARDのケイパビリティを活かし
ブランドの価値転換をサポートする
近年、デジタルコマースの市場規模は急速に拡大しています。欧米ではユーザーを起点としたプロダクトの開発や顧客体験(以下、CX)の設計をおこない、初期段階からデジタルコミュニケーションを軸にプロダクトやブランドなどをファンと共に成長させていくD2C/DNVB(Digitally Native Vertical Brand)事業が登場し、業界変革が起きています。
それと同時に、消費者の消費行動は「モノ消費」から「コト消費」、そして「イミ消費」へと変化しています。「イミ消費」がメインストリームとなる時代は、ターゲット層のインサイトやニーズを起点に生み出されたプロダクトこそが支持されるでしょう。
多くの企業やブランドは、ターゲットが曖昧な状態で商品開発をするのではなく、D2C/DNVB事業のようにユーザー起点でCXを考えることが求められています。NEW STANDARD社では、このような営みを「ブランドをデジタルトランスフォーメーションする」と定義し、そのサポートを行う「BDX」を提供し始めました。
「BDX」は、ライフスタイルメディア『TABI LABO』やイベントスペース&カフェ「BPM」、D2Cサプリメントブランド「Tune」の開発や運営により培ってきたNEW STANDARD社のノウハウやケイパビリティを活かし、CXのコンセプトやブランドアイデンティティなどを策定しながら、新規ブランドの立ち上げや既存ブランドの再創造・再構築をするサービスです。
「正解」を提示するのではなく
ユーザーの声に耳を傾ける
NEW STANDARD社はデザインコンサルティングファーム「IDEO」と日本のベンチャーキャピタル「Genuine Startups」の合弁で2016年に設立された企業「D4V(Design for Ventures)」から出資を受けており、デザインシンキングのフレームワークをインストールしていただいています。会社名をTABILABOからNEW STANDARDへと変更する際に行なったリブランディングでは、デザインシンキングのプロセスを取り入れました。加えて、D2Cサプリメントブランド「Tune」の開発においても、そのプロセスを踏襲しています。
松本:デザインシンキングのフレームワークを実行していることはNEW STANDARD社の強みだと考えています。広告制作事業は『TABI LABO』に掲載する記事広告や動画広告から始まり、大正製薬の案件ではブランディングやイベント企画に携わったり、多くのクライアントと多岐にわたる仕事をしてきました。最近ではサービス開発や商品開発の依頼もいただき、それらを踏まえたエグゼキューション力があるからこそ単なるコンサルティングに留まらず、実装の部分もお手伝いが可能です。そういったプレイヤーは少ないのではないかと考えています。
2014年にTABI LABOを立ち上げ、事業を拡大するなかで培われてきたNEW STANDARD社が大切にしている考え方を、久志は次のように語ります。
久志:時代や外部環境などが移り変わるなかで、これまで正解だと考えられていた方法が通用しない場面もあるのではないでしょうか。「誰かが正解を持っている」と考えるのは時代錯誤であり、常に答えを探す姿勢が重要になっていると考えています。
だからこそ、NEW STANDARD社ではそれぞれのメンバーに専門性がありつつも、クライアントに対して正解を提示するのではなく、ユーザーの声に耳を傾けて「一緒に正解を探る」アプローチを重要視しています。このような手法は、D2C/DNVBと呼ばれるブランド群で取り入れられているものであり、これからの時代のブランディングに欠かせない考え方だと思っています。
「需要と供給」から
「戦略とブランド」へ
「BDX」はブランドアイデンティティの策定だけでなく、ユーザーからのフィードバックをもとにプロダクトやサービスの改善が可能となるコミュニティ構築と運営、PDCAサイクルをスピーディーに運用し改善点の発見やその解決策を提供するなど、D2C/DNVB事業構築の一連の流れを体系立てた新規事業創造のフォーマットを開発しています。ブランドをデジタルトランスフォーメーションする際に必要となる全ての要素を提供することで、その転換を手厚くサポートしているのです。
久志:日本の企業やブランドの多くは、需要に対して供給の役割を果たすかたちで成長してきました。そこに強みがありつつも、自分たちの顧客や提供価値を把握していないことも多く、戦略やブランディングの観点では優れているとは言えないケースも存在します。
現在はインターネットの普及と発達により、これまで以上に多くの人に商品やサービスなどを届けられるようになりました。リーチできる母数が増えたからこそ、企業やブランドとして設定しているターゲット層を理解することが、より求められています。彼/彼女らは何を求めているのか? なぜ商品を手に取ってもらえるのか? など、さまざまな角度からターゲット層のニーズを分析しなければいけないのです。こうした作業をするには、核となるブランドアイデンティティが特に重要になってきます。
言葉や表現にこだわるのではなく、指針を決めるという行為が重要です。そうすれば、“やるべきこと”と“やらなくてもいいこと”を把握できるようになるでしょう。この「需要と供給」から「戦略とブランド」という構造への転換をサポートするのが「BDX」です。
クライアントと
ブランドアイデンティティを共創する
BDXでは、具体的にどのようなソリューションを提供しているのでしょうか。NEW STANDARD社が手掛けている案件のなかでも多いのが、「パッケージデザイン」や「コミュニケーションプランニング」を起点とした商品開発のプロジェクトです。各プロジェクトにおけるプロセスは、下記のようなものでした。
松本:パッケージデザインとコミュニケーションプランニングに関する相談を受ける際のNEW STANDARD社への期待は、ミレニアル世代を中心としたユーザーインサイトのデータを保有していることと、彼/彼女らへのコミュニケーション方法を把握していることでした。
しかし、クライアントが開発中の商品はブランドアイデンティティがまだ明確に定まっていないケースも多く、「それらしいパッケージデザインやコミュニケーションプランニングは考えられますが、それでは意味のないものになってしまいます」と伝えたことがきっかけとなり、商品開発そのものにも弊社が関わるようなケースが多く存在します。
商品開発の際に用いたのが、デザインシンキングのアプローチです。市場に関するリサーチから実施し、商品に対する評価を聞き出しました。潜在化しているインサイトをグルーピングし、大きな課題としてひとつの言葉で定義しました。
次のステップは「How Might We…?」を考えることでした。「どうすれば課題を解決できそうか?」というアイデアを出し合うフェーズです。ブランドアイデンティティを策定した後は、ユーザーヒアリングを行ない「ブランドアイデンティティを通して伝えたいメッセージを感じられるのか?」などを確かめていきます。
関根:ブランドアイデンティティが定まっているからこそ、パッケージをデザインする際は「見た目の良し悪し」ではなく、明確な基準をもつことができると考えています。
その後、定量調査を行ない、ユーザーからのフィードバックをもとにブランドアイデンティティやパッケージデザインの改善を進めていくプロセスに移る予定です。
久志:なぜブランドアイデンティティを起点に考えるべきかというと、パッケージデザインやマーケティング、カスタマーサポートなどを別個に検討していくと、CXに一貫性を持たせることができないからです。だからこそ「BDX」ではユーザーのインサイトを聞きながらブランド・アイデンティティを策定し、具体的なプロダクト開発を進めていくことが重要であり、その際にNEW STANDARD社がもつケイパビリティが活きてくると思うんです。